忘恩

今年は例年より早く梅雨入りを迎えました。

今年は、例年より早く、東海地方は梅雨入りを迎えました。ただ、じめじめと降り続けることはなく、むしろまだ本格的な梅雨入りとは言えない天気が続いています。傘の出番はこれからかもしれません。

さて、当山の三門前にはそんな傘にまつわる言葉を掲示してあります。

忘恩  借りた傘 雨が止んだら 邪魔になる

出かけた先で雨が降り出したら困りますよね。そんなとき、訪問先で親切に傘を貸してくださることもあります。「あぁ助かった、濡れなくてすむ」と思っていても、しばらくしたら雨が止むことこともあります。
借りた傘ですので、なくすわけにはいきません。あれほどありがたかった傘は、今度は手をふさぐ「荷物」に感じられるでしょう。「こんなことなら借りてこなければよかった」「こんなにすぐ止むなら雨宿りしていればよかった」と、さきほどの感謝の気持ちが後悔にかわるかもしれません。

私たちの人生はどうでしょう。

困った時、苦しい時、誰かの助けや存在が自分にとっての大きな支えになることがあります。
しかし、楽しい時、うまくいっている時はその恩を忘れがちです。時にはうっとうしく思うこともあるかもしれません。身近な人であればなおさらです。

また、人生の中での苦しみや悲しみに、仏教の教えが癒しをもたらすこともあるでしょう。
しかし、順風満帆な人生を歩んでいるときは、目に見えないものを心の拠り所と感じることはないかもしれません。

人生の雨の日に支えになったものを、晴れの日にも忘れずにいたいものです。

南無阿弥陀仏

令和3年 おてつぎこども奉仕団のご案内

昨年はすべて中止となってしまった本山行事も、今年は少しずつですが再開の兆しを見せています。例年、夏休みに総本山・知恩院で行われる「おてつぎこども奉仕団」も募集が開始されました。これを受け、当山では、8月18日~20日の枠を予約しました。

おてつぎこども奉仕団は、お子様たちが日常と異なる環境で仏様との縁を深め、出会った友達との共同生活を通じて「明るく、正しく、仲良く」暮らすことを学ぶ修行道場です。総本山・知恩院での宿泊をともなう修行体験は、またとない体験となるでしょう。

例年、参加した子どもたちからは「思い出深いものになりました。友達もたくさんでき、また参加したいです」との感想をいただいています。こどもの時の体験は大きくなっても記憶に残っているものです。この機会に、ぜひお子様、お孫様にご参加をお勧めください。

※新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、中止となる場合もございます。あらかじめご了承ください

【日 時】 令和3年8月18日(水)~20日(土)
【会 場】 
総本山知恩院(2泊)
【対 象】 
小学校4年生~中学校3年生(小学校3年生でも参加可能です)
【費 用】 
無料(ただし、知恩院までの往復交通費は各自負担ください)
【申込方法】
7月10日までに、【こちらのフォーム】から住所氏名をお知らせ下さい。申込書類一式をお送りします。以下の【こどもおてつぎチラシ】をダウンロードして、記入した申込用紙を法源寺(〒416-0954 富士市本市場町1040)に直接お送りいただいても構いません。
【問合先】 ☎0545(61)1066 ✉hougenji.temple☆gmail.com(☆を@に変えて下さい)

クラウドファンディングで地域づくり

今年もゴールデンウィークは自粛期間となってしまい、なかなかうつうつとした日が続いています。そんななか、富士宮市の浄土宗寺院・来迎寺で地域づくりのための新たな挑戦が始まったというニュースが飛び込んできました(富士宮市に地域のみんなが集まるおてらカフェを作りたい!)。

コロナ禍であらゆることが自粛や中止される中、地域の人のための居場所づくりを新たに始めたというのですからこれほど素晴らしいことはありません。しかも、クラウドファンディングという、インターネットを通じた浄財勧募(寄付のお願い)という点も目新しく、興味をひくものです。

兼務住職として来迎寺を守ってきた平等寺住職・岩田照賢上人は、これまで介護者カフェやひきこもりの親の会などを行ってきましたが、今回の寄付を元手に、寺院のバリアフリー化や子ども食堂のための調理器具の購入などを行い、老若男女、地域の誰もが集まれる居場所づくりに取り組むとのことです。

実は、寺院では昔から、修繕や建立のために勧進(かんじん)という制度がありました。もっとも有名なのは、奈良の大仏でしょう。聖武天皇の命によって造立された大仏は、行基という高僧によって勧進が行われました。行基は、行基菩薩とも呼ばれるほど民衆の信頼が厚かったため、多くの寄付や人手が集まり、大仏造立が成し遂げられたといわれています。

そういう意味では、寺院によるクラウドファンディングは、「現代版勧進」ということができるかもしれません。しかし、クラウドファンディングにしろ、勧進にしろ、その成功の鍵を握っているのは、呼びかける僧侶や寺院が、人々に広く愛されているか、必要とされているか、という点でしょう。

地域のため、社会のために何ができるか。来迎寺のクラウドファンディングは、寺院のこれからの姿を考えさせられる新たな挑戦のように思います。ぜひリンク先の記事をご覧いただき、余力があればクラウドファンディングにもご協力いただければ幸いです(返礼品も魅力的です)。

【リンク】富士山のお膝元!富士宮市に地域のみんなが集まるお寺カフェを作りたい!

涙骨賞、受賞

4月も終わろうとしているころ、私が代表を務めるひとさじの会が中外日報社の主催する涙骨賞の実践部門に選ばれたというニュースが飛び込んでまいりました。

中外日報社は明治30年に創刊された宗教専門紙で、その創刊者・真渓涙骨(1869~1956)にちなんで、広く精神文化をテーマとする論文と、信仰に基づく様々な活動を実践する個人・団体を顕彰することを目的として「涙骨賞」は設けられています。

ひとさじの会は、2009年に僧侶によって立ち上げられた生活困窮者の支援団体で、東京の浅草・上野を中心に、炊き出し・夜回りをしたり、身寄りのない方の供養を行ったりしてきました。

立ち上げ時から活動に加わっていたとはいえ、受賞のタイミングで私が代表にいただけで、会を立ち上げられた先輩方、陰日向に支えてくださったボランティアの皆様の力なくしてはこの名誉にあずかることはできませんでした。

あらめて多くの皆様に感謝申し上げたいと思います。

と同時に、活動開始から10年以上たった今も生活困窮者が減らない社会のありように心を痛めています。とりわけ、昨年からのコロナ禍では、これまでぎりぎりで頑張ってこられた方がさらに苦しい状況に立たされています。

多くの人の生きづらさが少しでも和らぐよう、「困ったときはお互い様」の気持ちが社会に広がっていくことを願っています。

南無阿弥陀仏

法源寺農園部、発足!

以前、ご紹介した飛び地境内を耕し、家庭菜園ならぬ寺庭菜園を始めました。

お手伝いいただいているのは、富士市若者相談窓口 ココ☆カラに通う若者たち。一緒に開墾した後、この畑を「青空」と名づけました。“Social Farming”とは、就労のための農業ではなく、ケアや交流の場としての農業を意味します。生きづらさを抱えた人も、土いじりをしたい人も、美味しい野菜を食べたい人も、誰かと話したい人も、いろいろな人が集える場になればいいなと思って、「青空」の前に付けました。

荒地を開墾し(文字通り!)、畝を三本作り、そのうちの2つにはジャガイモを植え付けました。GW明けぐらいにもう一本の畝にサツマイモを植えようと思っています。現在はジャガイモの成長を楽しみながら、日々雑草との戦いです。

これからも、ココ☆カラに通う就労を目指す若者たちと一緒に試行錯誤しながら野菜を育てたいと思います。

農業指導、お手伝い、見学、大歓迎です!お寺にお参りの際にぜひ様子をのぞいてみてください。そして、その時もし作業している人がいたら「ご苦労さま」「精が出るね」などお声掛けいただけたらありがたく思います。

咲いた花見て喜ぶならば

早いもので今年も四分の一が終わってしまいました。桜の季節もいつの間にか去り、新緑がまぶしい季節になろうとしています。

さて、浄土宗のHPにあるエッセイ集「いっしょいっしょ」に私の寄稿した文章「咲いた花見て喜ぶならば」が掲載されました。せっかくですので、檀信徒の皆様にも読んでいただきたく、以下に転載いたします。このエッセイ集、私の駄文はさておき、ほかの方々の文章はたいへん素晴らしいものばかりです。

上記の太字のところをクリックすると、リンクに飛べるようにしてあります。お時間のある時にお読みいただければ幸いです。

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昨春に起こった新型コロナウイルスに私たちは今も翻弄されています。生来、楽観的な性格の私は、これほどまで深刻化、長期化するとは思っていませんでした。しかし、その見通しは甘く、最近では変異株まで現れ、さらなる対応を余儀なくされています。

一年以上に及ぶコロナ禍の影響は、これまでギリギリで踏ん張っていた人たちにより厳しく現れました。非正規労働者、ひとり親家庭、在留外国人等、頼る人が少なく、立場の弱い人たちほどより深刻な状況におかれています。

私が代表を務める、路上生活者への炊き出し・配食活動を行っている生活困窮者支援団体「ひとさじの会」では、在日ベトナム仏教信者会との交流があり、これまで多くの在日ベトナム人ボランティアが活動に参加してくださいました。彼らの多くは、留学生や技能実習生として来日した若い世代の方々です。

このコロナ禍で、仕事を失った技能実習生もいます。帰国する予定だったのにいまだ帰れない留学生もいます。こうした状況を知り、せめて食だけでも支援できないかと、昨年「在日ベトナム人への緊急施米支縁プロジェクト」を行い、これまで20トンのお米をお送りしました。

私たちがこのように日本にいるベトナムの方々に心を寄せているのは、ひとさじの会として直接的な関わりがあるのはもちろんですが、技能実習制度の構造的な問題が、路上生活者のそれと非常に似通っているところにもあります。

現在、技能実習生がいなければ農業や漁業は成り立たないと言われています。とくに、技能実習生に占めるベトナム人の割合は41.6%と最も多く、農業や漁業を支える重要な担い手になっていると言っても過言ではありません。私たちがコンビニで買うおにぎり一つとっても、米の生産から中身の具材の加工に至るまで、多くの部分で技能実習生の力を借りているのかもしれません。しかし、目に見えない労働の裏側で、技能実習という名の搾取が横行していることも事実です。

日本語は喋れるけど堪能でない。日本の法律に疎い。職場での立場が弱い。様々な理由が考えられますが、こういった、言語スキル、情報の非対称性や社会的立場の弱さなど、私たちが普段かかわっている路上生活者の方々と重なり合う部分が多くあります。

路上生活者の多くは、かつて、体を資本とし、高度経済成長期の日本の建設現場を支えてきました。私たちが使っている道路や建物の中には、そういった方々の力によってできたものが数多くあります。しかし、バブルの崩壊、労働者自身の高齢化や現場の機械化など、活躍の場が失われていきました。路上生活者の方々の中には、貧困ビジネスによる搾取の対象となってしまわれた経験をお持ちの方もいます。

私たちの幸せが誰かの不幸せの上に成り立っているのだとしたらそれは悲しいことです。そして、それに対して無自覚でいることも、見ないふりをしていることも、また悲しいことです。今ある生活はきっと自分一人で手に入れたものではないはず。目に見えない多くの縁によって支えられている「今」を有難く受けとめ、自分に何ができるか考えたいものです。

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※写真は、「雪晃」(セッコウ)というサボテンの花です。春に訪れた伊豆シャボテン公園を訪れた際、あまりにきれいでしたので写真に収めてきました。花言葉は「あたたかい心」だそうです。

富士宮市生活支援体制整備事業セミナー

3月21日(日)、富士宮市生活支援体制整備事業セミナー(主催:富士宮市社会福祉協議会)で「寺院からはじまる共生の地域づくり~宗派、檀家の垣根を超えたつながりを求めて~」という演題で講演をいたしました。

私の専門は宗教社会学ですが、最近では終末期ケアやた高齢者ケアにおける僧侶(宗教者)の役割や、地域包括ケアシステムにおける寺院の役割などについて研究しておりまして、このようなお話をいただいた次第です。

当日はあいにくの天気でしたが、50名を超える富士宮市各地域の地域づくりのリーダーにお集まりいただきました。

私の話はいたって簡単です。

現在、厚生労働省は「住み慣れた地域で、自分らしい人生をまっとうする」をキーワードに、地域包括ケアシステムを推進していますが、その実効性を高めるためには、地域社会における支え合い、助け合いの場(=ケアの場)をどれだけ作れるかがポイントです。

しかし、少子高齢化、過疎化等で地域社会の力自体が衰退する中、ケアのための新たな組織を立ち上げるのはなかなか難しいこと。そうであるなら、すでにある様々な組織にケアの視点を付与したらどうかというものです。

生活の困りごとなら支援機関を利用すればいいのでは、と思うかもしれません。でも、困っていても自ら専門支援機関を訪れる人はそう多くありません。自立を求められる現代社会においては、「助けて」、「困った」をいうことがはばかられます。また、自分の「困った」が支援制度のどの枠組みに当てはまるのかわからない複雑化した「困った」状態も少なくありません。最近よく耳にするようになった8050問題もその典型例です。

様々な生活課題や生きづらさを抱えた人が少しでも楽になれるよう地域社会には、「気づく場」、「気づく時」、「気づく人」がいる「集いの場」が必要です。そして、地域にはすでに「集いの場」が遍在しています。町内会、PTA、スポーツクラブ、趣味の会など、地縁によって参加するものから、自分の興味関心によって参加するものまで様々です。

今では、お寺といえば葬儀や法事などで行く場所というイメージが強いかもしれません。しかし、その昔、寺院は寺子屋と呼ばれ、学習塾やコミュニティセンターの役割を果たしていました(当山でも先代住職の時は書道教室をやっていたようです)。現代でもお寺では地縁や血縁のつながりをもとにした人が集う機会があります。ですので寺院もこの「集いの場」に加えていただき、互いを気にかけ、支え合う、そんな場所にしていけたらなぁと思っています。

浄土宗では共生(ともいき)といって、現世空間だけでなく、すべてのいのちの連綿とした繫がりを含め大切にすることをスローガンに掲げています。まさに、地域社会における共生にも通じる概念です。生きづらさを和らげ、ともに支え合う場づくりの一端を寺院が担うことができたら、ありがたいことです。

春彼岸信行会の厳修-YouTubeライブ配信

去る3月20日18時30分より、春彼岸信行会を厳修いたしました。当山本堂には12名ほどのお参りの方が見えましたが、今回の法要はいつもと少し変わったこともありました。

それはYouTubeでライブ配信をしたことです。実際、ライブ配信といっても、カメラは本尊様に固定でしたので、音声だけで視聴いただくという形でした。

昨年はすべての定期法要において、参加者を制限したり、飲食物の提供を控えたり、感染拡大防止のために規模を縮小する形で行わざるを得ませんでした。また、地域を超えての移動が自粛される中、遠方の家族が供養の場に集まることさえもままなりませんでした。

ワクチンの接種がいきわたるまでまだしばらくかかりそうです。コロナ禍の収束が見えない中、今年の夏の施餓鬼会(新盆家供養)、秋の十夜会を見すえて今回のYouTubeライブ配信を企画いたしました。

配信自体は大きなトラブルもなく、無事終えることができました(マイクの位置については反省点もあります)。ご視聴いただいた方からは「脚の悪い母も参加出来ました」「実家から離れて遠くに住んでいても配信で参加できてありがたかったです」との励みになるお言葉もいただきました。

お寺に足を運んでくださった方、オンラインで一緒にお参り下さった方、ありがとうございました。

春彼岸信行会法要のライブ配信

3月20日18:30より、当山本堂にて春彼岸信行会法要を行います。

また、今回は当日集まるのが心配という方のために、実験的にYouTubeにてライブ配信いたします。

とはいっても、あくまでも実験的なものですので、配信中にトラブルが生じるかもしれません。温かい心で見守っていただければありがたく思います。

【視聴はこちらから→】https://www.youtube.com/watch?v=CZg5vULy18Q

視聴には、インターネットへの接続が必要となりますが、当日お時間になりましたら上記画面をクリックしてください(埋め込み画面をそのまま視聴することもできます)。

ご一緒に手を合わせ、ともにお念仏をお唱え頂けましたら幸いです。

※通信環境によって、映像が流れるまでに時差がありますことをご了承ください。

東日本大震災から10年を迎えて

まもなく、東日本大震災から10年がたちます。

2011年3月11日午後2時46分、大きな揺れが日本列島を襲いました。地震によって起こされた大津波では岩手、宮城、福島の東北三県をはじめとした東日本が大きな被害を受けました。

私は、4月には福島県いわき市へ入り、地元の浄土宗青年会とともに、避難所での炊き出しなどを行いました。住職もその後、被災した寺院を見舞いに東北を訪れています。

私の勤める大正大学では、震災後より宮城県南三陸町とご縁を持ち、10年にわたって学生を派遣し、復旧復興活動だけでなく、南三陸町の魅力を発信する教育プログラムなども展開させてきました。

震災から10年を迎えるにあたって、学生たちから「コロナ禍で直接訪問することは難しいけど、何かできることはないだろうか」と相談を受け、2月27日にオンラインでの追悼法要「復興祈11-21」を行うことにしました。

YouTubeでのライブ配信ということで、準備にはかなり時間を割きましたが、その甲斐あって多くの方に視聴いただきました。

配信中には、南三陸と中継を結び、語り部の方に南三陸の現在の様子をご紹介いただいたり、南三陸にお住まいの方の復興ストーリーのインタビューをオンエアしたりしたのがよかったのかもしれません。

午後2時46分には、大正大学と南三陸町を繋ぎオンライン法要をお届けしました(大正大学は天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派、浄土宗、時宗による仏教系総合大学ですので、般若心経をお唱えしました。お導師は天台宗の先生です)。

法要の時間が一番視聴者が多かったことも印象的でした。南三陸町だけではなく、被災地へ思いを寄せる人がきっと画面の向こうから手を合わせてくださったことでしょう。

しかし、悲しいかな、人は忘れる生き物です。記憶も風化してしまいます。

こうやって折に触れ、あの日のことを思い出し、亡くなった人を悼み、災害への教訓を刻む機会が必要に思います。

3月11日、みなさんはどう過ごされますか?

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