あなたのさりげない一言が、誰かの支えになることも。
他人にかける言葉には気を使いたいですね。
A casual remark makes encourage others.
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浄土宗月訓カレンダーの3月の言葉。
字は大本山清浄華院第83世法主飯田実雄台下の揮ごうです。
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みなさんは、まいったなぁというとき、何気ない誰かの一言で救われたという経験はありませんか。逆に、不用意に発した一言が誰かを傷つけてしまい、あんなこと言わなければ…と後悔したことはありませんか。
私たちが発する言葉は力を持っています。その力は、人を勇気づけるものにもなれば、人を傷つけるものにもなります。そのことをよくよく考えて、私たちは言葉を選ばなければいけません。
さて、仏教の修行の一つに「布施」があります。布施というと、「あぁ、お寺に収める寄付のことね」と思われるかもしれませんが、本来は貪りの心や、執着を離れるための行いのことを言います(お金はその一部に過ぎません)。
お金がなければ布施ができないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、『雑宝蔵経』という経典の中には、「無財の七施」(※)と呼ばれる布施行が説かれています。
その名の通り、財物がなくても他者に施すことができる行いのことを言いますが、その一つに「相手に柔らかい思いやりのある言葉をかける」というものがあります。難しい言葉では「言辞施」といいますが、別名「愛語施」ともいいます。
なんだか字面は難しそうですが、いたってシンプルです。
辛そうな相手には、「どうしたの?」「何かあったの?」、悲しそうな相手には「大丈夫、そばにいるよ」、「力になるよ」、嬉しそうな相手には「よかったね」、「みんなも喜んでるよ」など、相手のことを慮って声掛けをすることです。
しかし、シンプルなことほどなかなかできないものです。ましてや、こちらの心に余裕がない時などは、他人のことより自分のことを優先に考えがち。相手の気持ちを推し量るどころか、どうしてこちらのことをわかってくれないのか!とつい突っかかってしまいます。
一つの言葉が励みとなる
あなたの言葉には力があります。ぜひ、その言葉を発する前に、投げかける相手のことを想像してみてください。言葉によって励まされた人は、きっとほかの人を励ます人になるでしょう。
人と人との間に優しい言葉があふれ、ともに励まし合う社会になれば、今よりももっと生きやすい世の中なると思いませんか。
ぜひ今日から実践していきましょう。
南無阿弥陀仏
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※無財の七施:誰でもいつでもできる布施行。以下の七つのことをいう。
①眼施・・・相手を憎むことなく、好ましい眼差しで接すること。
②和顔悦色施・・・和やかな喜びの顔つきで接すること。
③言辞施・・・相手に柔らかい思いやりのある言葉をかけてやること。
④身施・・・相手を敬い、我が身を惜しむことなく、他に尽くしていくこと。
⑤心施・・・善い心で相手の立場にたち心をかけていくこと。
⑥床座施・・・相手に座席を設けたり、譲ったりすること。
⑦房舎施・・・自分の家を一夜の宿として提供すること。