
他者を思いやる行動は、自身の幸せにつながります。
Helping others helpes ourselves.
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浄土宗月訓カレンダーの6月の言葉。
字は大本山増上寺第89世法主小澤憲珠台下の揮ごうです。
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「自利」とは、自らを利すること。
「利他」とは、他を利すること。
この二つを合わせて「自利利他」と言います。
より仏教的に言えば、自利とは自ら悟りを求め修行に励むこと。
利他とは他者を思って尽くすこと。
さらに浄土宗的に解釈するなら、自利とは極楽往生を願い念仏に励むこと、利他とは共に往生を願い自らの功徳を振り向けることといってよいかもしれません。
自利利他は大乗仏教の中心的な理念のひとつといわれています。
これらは車の両輪のようなものでどちらが欠けても前に進むことはできません。
どちらも同じくらい大切なものです。
体調の悪い時に周囲に気遣うのが難しいように、自分が満たされ落ち着いていなければ、他者を思いやることはできません。今風の言葉で言えば「セルフケア」です。社会的な活動をするために、自分自身を整えることはとても大切ですが、整った自分が誰のために何をするのかも同じくらい大切です。
現代社会は、「自分さえよければ」「他人は他人」となりがちです。
しかし、こうした考えは、人と人との分断を生み、結果として孤独と不安を生み出します。私たちは相互関係に生きる存在として、自分さえよければよい、という考え方を離れなければなりません。自分のことだけしか考えないのは、たんなる「利己」です。
また、利他の対象は、現世に生きる者だけでなく、過去生きていた人たちも含まれます。
たとえば、浄土宗のご法事では、みなさん一生懸命お念仏をおとなえします。この時、念仏によって自分が得られる功徳を他者(故人)に振り向けることで後生の安穏を願います。これを「回向」(えこう)と言います。
自利利他
わずか四文字のなかには、実に深い意味が込められています。
今月の言葉を思い浮かべながら、自分も大事に、他人も大事に過ごしてみてください。
きっとそれが仏教的な生き方を実践するということになるのだと思います。
南無阿弥陀仏