
知らない人に声をかけるのは勇気がいります。でも、その一言がよりよい関係を築いていく一歩になりますよ。
Talking tto someone for the first time takes courage, but can also be the beginning of a good relationship.
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浄土宗月訓カレンダーの4月の言葉。
字は大本山増上寺第89世法主小澤憲珠台下の揮ごうです。
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4月は進学や就職など新たなステージで新たな出会いを経験する人も多いでしょう。
初めての場所で期待と不安を抱きながらドキドキしているとき、仲間ができるとうれしいですよね。
これから起こるであろう楽しいことを分かち合える人との出会いには誰しも胸が躍ります。
最初のきっかけづくりが肝心です。自分から声をかけるか、それとも声をかけられるのを待つのか。本当は自分から声をかけたいのにそっけなくされてしまうのが怖くて、つい声をかけられるのを待ってしまう。そんな気持ちもわかります。
自分がそんな不安を感じているなら相手もそうかもしれません。勇気をもって声をかけてみると意外とうまくいくこともあるでしょう。
そんな時はぜひ名前を呼んで声をかけてみてください。名前を呼ばれると人は不思議と嬉しくなります。なぜなら、他ならない私を認識してもらっている、覚えてもらっている、という感覚が沸き上がるからです。
呼ばれることの嬉しさを感じた人は、名前を呼ぶことにも積極的になれるはず。人を嬉しくさせるというのは、言い換えれば人を幸せにするということ。「幸せにする」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、日々の生活の中に心がほっとする、豊かになる、そうした瞬間にも私たちは「幸せ」を感じます。ですから、名前を呼ばれて嬉しいなぁと思ってもらえたら、それは小さな幸せを提供できたということです。
周りの人を幸せにできることは喜ばしいですよね。
呼ぶ喜び 呼ばれる嬉しさ
さて、浄土宗では「なむあみだぶつ」と念仏をとなえることが大事と説きます。これは、阿弥陀仏の名前を呼ぶことにほかなりません。
法然上人が師と仰ぐ善導大師の遺した書物の中に、「衆生仏を称うれば、仏これを聞き給う」(わたしたちが阿弥陀様の名前をとなえれば、阿弥陀様はお聞きくださる)という一説があります。その名をとなえれば、きっとその声は届くということです。
さらに、その先には「衆生仏を念ずれば、仏も衆生を念じ給う」(わたしたちが阿弥陀様を念じれば、阿弥陀様もまた私たちのことを念じてくださる)と続きます。私たちが思いをかければ、阿弥陀様もまた私たちに思いを寄せてくださるということです。
きっと阿弥陀様は、私たちの呼ぶ声を聴き「よく頼ってくれたね」と喜び、救いの手を差し伸べてくれることでしょう。
今月の言葉には、そうした意味合いも込められているのではないでしょうか。
現世での人との関係性であれ、来世を願う中での仏様のとの関係性であれ、名前を呼ぶことはとても大事なコミュニケーションと言えるでしょう。新年度、新生活で初めて会う人同士に限らず、普段の生活の中で、身近にいる人、いつも接している人にもぜひ和顔をもって名前をよんであげてください。
南無阿弥陀仏