涅槃会を行いました

2月15日13時より、当山本堂で涅槃会をお勤めしました。底冷えのする日でしたが、寒い中お集まりくださった方には改めて御礼申し上げます。

さて、涅槃会とは仏教の開祖であるお釈迦様を偲び、その恩に感謝するために行う法要です。お釈迦様は2月15日に亡くなられたと言い伝えられていますので、多くのお寺ではこの日に涅槃会を行います。当山でも、13時より法要を勤め、その後、住職が絵解きを行いました。

絵解きでは、臨終に際し、頭北面西(頭を北向き、顔を西向き)にして横たわるお釈迦様の姿から、ご遺体を北枕にして寝かせるようになったこと、お釈迦様のお母様である摩耶夫人が我が子を助けようと薬袋を投げたことから「投薬」という言葉が生まれたことなど、現代の風習や言葉に通じうルーツがこの涅槃図に描かれていることをお話いたしました(※薬袋は一説には修行者の持ち物を入れる、衣鉢袋とも言われています)。

また、横たわるお釈迦様のまわりにある樹木は沙羅双樹の木です。全部で8本ありますが、4本は葉が青々と茂り、もう4本は葉が白く枯れています。これは、お釈迦様が残した仏教が不滅であることと、肉体はあるものはいずれ滅びるという無常観を示したものです。

誰もが習う平家物語の冒頭にある「娑(沙)羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」の一節はまさにこのことを言っているのです。

こうした「絵解き」はまさに仏教に親しむ機会となります。難解な言葉や教えも、こうして絵にして視覚的にとらえることで、多くの人が仏教の教えを理解することができます(キリスト教の教会にあるステンドグラスや絵画、彫像なども同じ効果があるといわれています)。ご参加の皆様にも、普段の法話以上に伝わったのではないでしょうか。

さて、ここで豆知識をひとつ。

お釈迦様が亡くなられたのは2月15日と言われていますが、そのほかにも、生まれた日は4月8日、さとりを開いた日は12月8日と伝わっています。それぞれの日に、花祭り(降誕会)や成道会を行うお寺さんもあるのではないでしょうか。

しかし、この記念日はインドからシルクロードを経て、中国、朝鮮半島と伝わってきた北伝仏教(大乗仏教)にしか示されていません。一方、スリランカ、タイなど南伝仏教(上座部仏教)では、生まれた日、さとりを開いた日、亡くなった日はすべて同じ日とされています。

ウェーサク(Vesak)と呼ばれるこの記念日ですが、東南アジアでは、毎年5月満月の日とされ、この日は国連の定める祝祭として公式に認定されています。国連はさまざな国で構成される国際機関ですので、宗教についても多様性を重んじているのです。

ひとくちに仏教といっても、国によってその信仰や実践の形態はずいぶん異なります。時代や人に合わせて発展していったのが今の日本の仏教の在り方ですので、他国とずいぶん違うところもあります。そんな違いもまたいずれご紹介したいと思います。

南無阿弥陀仏

ダンス×音楽×法源寺 動画が完成!

今年の夏は法源寺にとっても新たな可能性を感じさせる夏でした。NPO法人LAND FESさんによって、4回にわたってダンス×音楽ワークショップが開催され、寺院空間の新たな魅力を感じることができました。

その時の様子は、こちらのおてら日誌でも報告させていただきました(初回2回目3回目最終回)。その後、LAND FESさんからパフォーマンスの様子の撮影動画が完成したとのご連絡をいただきましたので、こちらでも紹介させていただきます。

動画を観ていただければすぐわかると思いますが、「これが法源寺の境内なのか!?」と目を疑うほど非常に格好良く映っております。まるで、映画のワンシーンみたいです!普段身近にあるものほどその魅力には気づけないものですね。第三者の視点で寺院を眺める機会をいただきましたこと、大変ありがたく思います。

このワークショップは全4回行われましたが、各回ごとのワークショップの動画もございます。先生方の紹介も含めてこちらのページに掲載されていますので、あわせてぜひご覧ください。

令和3年 おてつぎこども奉仕団のご案内

昨年はすべて中止となってしまった本山行事も、今年は少しずつですが再開の兆しを見せています。例年、夏休みに総本山・知恩院で行われる「おてつぎこども奉仕団」も募集が開始されました。これを受け、当山では、8月18日~20日の枠を予約しました。

おてつぎこども奉仕団は、お子様たちが日常と異なる環境で仏様との縁を深め、出会った友達との共同生活を通じて「明るく、正しく、仲良く」暮らすことを学ぶ修行道場です。総本山・知恩院での宿泊をともなう修行体験は、またとない体験となるでしょう。

例年、参加した子どもたちからは「思い出深いものになりました。友達もたくさんでき、また参加したいです」との感想をいただいています。こどもの時の体験は大きくなっても記憶に残っているものです。この機会に、ぜひお子様、お孫様にご参加をお勧めください。

※新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、中止となる場合もございます。あらかじめご了承ください

【日 時】 令和3年8月18日(水)~20日(土)
【会 場】 
総本山知恩院(2泊)
【対 象】 
小学校4年生~中学校3年生(小学校3年生でも参加可能です)
【費 用】 
無料(ただし、知恩院までの往復交通費は各自負担ください)
【申込方法】
7月10日までに、【こちらのフォーム】から住所氏名をお知らせ下さい。申込書類一式をお送りします。以下の【こどもおてつぎチラシ】をダウンロードして、記入した申込用紙を法源寺(〒416-0954 富士市本市場町1040)に直接お送りいただいても構いません。
【問合先】 ☎0545(61)1066 ✉hougenji.temple☆gmail.com(☆を@に変えて下さい)

クラウドファンディングで地域づくり

今年もゴールデンウィークは自粛期間となってしまい、なかなかうつうつとした日が続いています。そんななか、富士宮市の浄土宗寺院・来迎寺で地域づくりのための新たな挑戦が始まったというニュースが飛び込んできました(富士宮市に地域のみんなが集まるおてらカフェを作りたい!)。

コロナ禍であらゆることが自粛や中止される中、地域の人のための居場所づくりを新たに始めたというのですからこれほど素晴らしいことはありません。しかも、クラウドファンディングという、インターネットを通じた浄財勧募(寄付のお願い)という点も目新しく、興味をひくものです。

兼務住職として来迎寺を守ってきた平等寺住職・岩田照賢上人は、これまで介護者カフェやひきこもりの親の会などを行ってきましたが、今回の寄付を元手に、寺院のバリアフリー化や子ども食堂のための調理器具の購入などを行い、老若男女、地域の誰もが集まれる居場所づくりに取り組むとのことです。

実は、寺院では昔から、修繕や建立のために勧進(かんじん)という制度がありました。もっとも有名なのは、奈良の大仏でしょう。聖武天皇の命によって造立された大仏は、行基という高僧によって勧進が行われました。行基は、行基菩薩とも呼ばれるほど民衆の信頼が厚かったため、多くの寄付や人手が集まり、大仏造立が成し遂げられたといわれています。

そういう意味では、寺院によるクラウドファンディングは、「現代版勧進」ということができるかもしれません。しかし、クラウドファンディングにしろ、勧進にしろ、その成功の鍵を握っているのは、呼びかける僧侶や寺院が、人々に広く愛されているか、必要とされているか、という点でしょう。

地域のため、社会のために何ができるか。来迎寺のクラウドファンディングは、寺院のこれからの姿を考えさせられる新たな挑戦のように思います。ぜひリンク先の記事をご覧いただき、余力があればクラウドファンディングにもご協力いただければ幸いです(返礼品も魅力的です)。

【リンク】富士山のお膝元!富士宮市に地域のみんなが集まるお寺カフェを作りたい!

富士宮市生活支援体制整備事業セミナー

3月21日(日)、富士宮市生活支援体制整備事業セミナー(主催:富士宮市社会福祉協議会)で「寺院からはじまる共生の地域づくり~宗派、檀家の垣根を超えたつながりを求めて~」という演題で講演をいたしました。

私の専門は宗教社会学ですが、最近では終末期ケアやた高齢者ケアにおける僧侶(宗教者)の役割や、地域包括ケアシステムにおける寺院の役割などについて研究しておりまして、このようなお話をいただいた次第です。

当日はあいにくの天気でしたが、50名を超える富士宮市各地域の地域づくりのリーダーにお集まりいただきました。

私の話はいたって簡単です。

現在、厚生労働省は「住み慣れた地域で、自分らしい人生をまっとうする」をキーワードに、地域包括ケアシステムを推進していますが、その実効性を高めるためには、地域社会における支え合い、助け合いの場(=ケアの場)をどれだけ作れるかがポイントです。

しかし、少子高齢化、過疎化等で地域社会の力自体が衰退する中、ケアのための新たな組織を立ち上げるのはなかなか難しいこと。そうであるなら、すでにある様々な組織にケアの視点を付与したらどうかというものです。

生活の困りごとなら支援機関を利用すればいいのでは、と思うかもしれません。でも、困っていても自ら専門支援機関を訪れる人はそう多くありません。自立を求められる現代社会においては、「助けて」、「困った」をいうことがはばかられます。また、自分の「困った」が支援制度のどの枠組みに当てはまるのかわからない複雑化した「困った」状態も少なくありません。最近よく耳にするようになった8050問題もその典型例です。

様々な生活課題や生きづらさを抱えた人が少しでも楽になれるよう地域社会には、「気づく場」、「気づく時」、「気づく人」がいる「集いの場」が必要です。そして、地域にはすでに「集いの場」が遍在しています。町内会、PTA、スポーツクラブ、趣味の会など、地縁によって参加するものから、自分の興味関心によって参加するものまで様々です。

今では、お寺といえば葬儀や法事などで行く場所というイメージが強いかもしれません。しかし、その昔、寺院は寺子屋と呼ばれ、学習塾やコミュニティセンターの役割を果たしていました(当山でも先代住職の時は書道教室をやっていたようです)。現代でもお寺では地縁や血縁のつながりをもとにした人が集う機会があります。ですので寺院もこの「集いの場」に加えていただき、互いを気にかけ、支え合う、そんな場所にしていけたらなぁと思っています。

浄土宗では共生(ともいき)といって、現世空間だけでなく、すべてのいのちの連綿とした繫がりを含め大切にすることをスローガンに掲げています。まさに、地域社会における共生にも通じる概念です。生きづらさを和らげ、ともに支え合う場づくりの一端を寺院が担うことができたら、ありがたいことです。

春彼岸信行会の厳修-YouTubeライブ配信

去る3月20日18時30分より、春彼岸信行会を厳修いたしました。当山本堂には12名ほどのお参りの方が見えましたが、今回の法要はいつもと少し変わったこともありました。

それはYouTubeでライブ配信をしたことです。実際、ライブ配信といっても、カメラは本尊様に固定でしたので、音声だけで視聴いただくという形でした。

昨年はすべての定期法要において、参加者を制限したり、飲食物の提供を控えたり、感染拡大防止のために規模を縮小する形で行わざるを得ませんでした。また、地域を超えての移動が自粛される中、遠方の家族が供養の場に集まることさえもままなりませんでした。

ワクチンの接種がいきわたるまでまだしばらくかかりそうです。コロナ禍の収束が見えない中、今年の夏の施餓鬼会(新盆家供養)、秋の十夜会を見すえて今回のYouTubeライブ配信を企画いたしました。

配信自体は大きなトラブルもなく、無事終えることができました(マイクの位置については反省点もあります)。ご視聴いただいた方からは「脚の悪い母も参加出来ました」「実家から離れて遠くに住んでいても配信で参加できてありがたかったです」との励みになるお言葉もいただきました。

お寺に足を運んでくださった方、オンラインで一緒にお参り下さった方、ありがとうございました。

東日本大震災から10年を迎えて

まもなく、東日本大震災から10年がたちます。

2011年3月11日午後2時46分、大きな揺れが日本列島を襲いました。地震によって起こされた大津波では岩手、宮城、福島の東北三県をはじめとした東日本が大きな被害を受けました。

私は、4月には福島県いわき市へ入り、地元の浄土宗青年会とともに、避難所での炊き出しなどを行いました。住職もその後、被災した寺院を見舞いに東北を訪れています。

私の勤める大正大学では、震災後より宮城県南三陸町とご縁を持ち、10年にわたって学生を派遣し、復旧復興活動だけでなく、南三陸町の魅力を発信する教育プログラムなども展開させてきました。

震災から10年を迎えるにあたって、学生たちから「コロナ禍で直接訪問することは難しいけど、何かできることはないだろうか」と相談を受け、2月27日にオンラインでの追悼法要「復興祈11-21」を行うことにしました。

YouTubeでのライブ配信ということで、準備にはかなり時間を割きましたが、その甲斐あって多くの方に視聴いただきました。

配信中には、南三陸と中継を結び、語り部の方に南三陸の現在の様子をご紹介いただいたり、南三陸にお住まいの方の復興ストーリーのインタビューをオンエアしたりしたのがよかったのかもしれません。

午後2時46分には、大正大学と南三陸町を繋ぎオンライン法要をお届けしました(大正大学は天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派、浄土宗、時宗による仏教系総合大学ですので、般若心経をお唱えしました。お導師は天台宗の先生です)。

法要の時間が一番視聴者が多かったことも印象的でした。南三陸町だけではなく、被災地へ思いを寄せる人がきっと画面の向こうから手を合わせてくださったことでしょう。

しかし、悲しいかな、人は忘れる生き物です。記憶も風化してしまいます。

こうやって折に触れ、あの日のことを思い出し、亡くなった人を悼み、災害への教訓を刻む機会が必要に思います。

3月11日、みなさんはどう過ごされますか?

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